30代後半、市場価値を知ることから始めた転職。現実とのギャップ、戦略変更のリアル
市場価値を知ることから始まった30代後半の転職活動
30代後半になり、漠然としたキャリアへの不安や、現職での成長の鈍化を感じ始めたとき、私は転職を意識し始めました。特に気になったのが、自身の「市場価値」です。今の自分の経験やスキルが、外部の企業から見てどれほどの評価を得られるのか、そしてそれは期待するキャリアアップや年収アップに繋がるのかを知りたいと考えたのです。
多くの30代後半ビジネスパーソンと同じように、私も現職である程度の経験を積み、一定のポジションに就いていました。しかし、いざ転職市場に目を向けようとしたとき、「自分の武器は何だろう」「他の同世代はどのくらいのレベルなのだろう」といった疑問が次々と湧いてきました。この疑問に答えるため、まずは自身の市場価値を客観的に把握することから転職活動をスタートさせることにしました。
この記事では、私が市場価値を知るために具体的に何を行い、そこで見えてきた現実と理想とのギャップにどう向き合い、その後の転職活動の戦略をどのように変更していったのか、そのリアルな経験をお伝えします。これから転職活動を始める方、特にご自身の市場価値について考えている30代後半の方にとって、何か示唆となる情報が含まれていれば幸いです。
市場価値を把握するために試したこと
自身の市場価値を知るために、私が最初に行ったのは複数の転職エージェントに登録し、キャリアコンサルタントとの面談を行うことでした。大手から特化型まで、タイプの異なる3社に登録しました。
エージェント面談では、これまでの職務経歴やスキル、希望条件などを伝え、それに基づいた求人紹介と、キャリアコンサルタントからの市場評価を聞きました。彼らは数多くの転職事例を見ているプロですから、客観的な視点からのアドバイスがもらえると考えたのです。
また、スカウトサービスにもいくつか登録し、どのような企業から、どのようなポジションで声がかかるのかを試しました。匿名プロフィールでも、職務経歴やスキルを詳細に入力することで、企業からの関心度合いを測れると感じました。
さらに、具体的な求人情報や企業の採用基準を知るために、興味のある企業の採用ページを調べたり、ビジネス系SNSで同じ職種や業界の人のキャリアパスを参考にしたりもしました。可能であれば、カジュアル面談などを通じて、企業側のリアルな情報や求める人物像を肌で感じることも試みました。
理想と現実のギャップに直面
こうした活動を通じて見えてきたのは、当初抱いていた自己評価と市場の評価との間の、想像以上のギャップでした。
例えば、ある大手エージェントからは、「これまでのご経験は素晴らしいですが、特定のスキルセットにおいては、同世代のハイキャリア層と比較するとやや伸び悩んでいる印象です。特に新しい技術へのキャッチアップという点では、厳しい評価になる可能性があります」といった、耳の痛いフィードバックを受けました。自分では経験豊富だと考えていたのですが、市場が求める「新しい価値」という視点では、認識が甘かったようです。
スカウトサービスでも、声がかかるのは自分の希望するレベルや業界とは異なる企業が多かったり、条件面(特に年収)が期待値を下回っていたりすることが少なくありませんでした。自信を持って応募した企業の書類選考に、予想以上に落ちてしまったこともありました。ある外資系企業の選考では、一次面接で早々に「求める人物像と少し異なりますね」と率直に言われ、自分の強みが相手に全く響かなかったという経験もあります。
こうした経験から、私は自身の市場価値を過大評価していたことに気づかされました。特定の分野での経験はあっても、それが常に市場で高く評価されるとは限らない。特に変化の速い業界や職種では、常に最新のスキルや知識をアップデートし続けることの重要性を痛感しました。また、企業が求めるのは単なる経験年数ではなく、「その経験を通じて何を生み出せるか」「どう企業に貢献できるか」という、より実践的で将来に向けた価値であるという現実を突きつけられました。
戦略変更と軌道修正
市場価値の現実を知ったことで、私の転職活動の戦略は大きく変わりました。当初は「年収アップ」「より高いポジション」といった条件面を重視していましたが、目の前の現実を踏まえ、まずは自身の「市場価値を高める」という視点を加えることにしました。
具体的な軌道修正としては、以下の点に取り組みました。
- 応募先の再検討: 年収やポジションだけでなく、自身のスキルや経験が活かせるか、あるいは新しいスキルを習得できる環境か、という視点で企業を探すようになりました。必ずしも大手や有名企業にこだわるのではなく、自身の成長に繋がる可能性のある中小・ベンチャー企業も選択肢に入れるようになりました。
- 自己PRの見直し: これまでの「経験を積んできたこと」をアピールするだけでなく、「その経験を活かして、応募先企業で具体的に何ができるか」「将来的にどのように貢献できるポテンシャルがあるか」という点を、より明確かつ具体的に伝えるように工夫しました。
- スキルの棚卸しと補強: 面談や選考フィードバックで指摘された弱点を補うため、関連書籍で学んだり、オンライン講座を検討したりするなど、不足している知識やスキルのキャッチアップに努めました。
- エージェントとの連携強化: 市場のリアルを理解した上で、エージェントに対してより正直に、自身の課題や希望を伝えるようにしました。彼らも現実を踏まえたアドバイスや、適切な求人を紹介してくれるようになり、連携がスムーズになりました。
軌道修正後の活動と得られた結果
戦略を変更してからは、選考の感触が少しずつ変わってきたように感じました。書類通過率が若干上がり、面接でも以前より建設的な対話ができる機会が増えました。
結果として、当初の第一志望群だった企業とは異なる企業から内定を得ることができました。年収については、当初の「大幅アップ」という期待値からは若干下がったものの、現職よりはプラスとなり、市場価値の現実を知る前よりは納得感のある提示額でした。
この企業を選んだ決め手は、自身のこれまでの経験が活かせると同時に、新しい分野にチャレンジできる環境があったことです。純粋な年収アップだけを追い求めるのではなく、「自身の市場価値を今後さらに高めていくためのステップ」として捉え直した結果、納得のいく意思決定ができたと感じています。
もちろん、すべての選考が順調に進んだわけではありません。戦略変更後も不採用は続きましたし、「本当にこの選択で良いのか」と悩むことも多々ありました。しかし、市場の現実を知り、それを受け入れた上で「自分には何ができて、何を目指すべきか」を真剣に考え直したプロセスは、転職活動だけでなく、その後のキャリアにおいても非常に大きな財産になったと感じています。
この経験から学んだこと、読者への示唆
30代後半からの転職において、自身の市場価値を客観的に把握することは非常に重要です。それは、単に「自分がいくらで売れるか」を知るだけでなく、「市場から見て、自分の強みと弱みは何か」「今後どこを伸ばしていくべきか」という、より建設的なキャリアプランを考えるための第一歩となります。
もし、市場価値を知ることで理想と現実のギャップに直面したとしても、それは決してネガティブなことばかりではありません。むしろ、現実を正しく認識し、戦略を練り直す絶好の機会となります。大切なのは、そこで立ち止まらず、ギャップを埋めるための努力をしたり、自身の価値が正当に評価される別のフィールドを探したりと、柔軟に軌道修正を行う勇気を持つことです。
転職活動は、自分自身のキャリアと真剣に向き合うプロセスです。特に30代後半は、これまでのキャリアの集大成と、今後のキャリアの方向性を考える重要な時期です。市場価値という現実の視点を取り入れることで、より地に足の着いた、そして自身の成長に繋がる転職を実現できる可能性が高まると、私の経験から強く感じています。
これから転職活動を始められる方、あるいは活動中で悩んでいる方は、ぜひ一度立ち止まって、ご自身の市場価値について客観的に考えてみることをお勧めします。そして、もし理想と現実の間にギャップがあったとしても、それを前向きに捉え、自身のキャリア戦略を見直すきっかけとしていただければと思います。