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30代後半で初めての転職。長年同じ会社にいた私が経験した「外の世界」のリアルと学び

Tags: 30代後半, 初めての転職, 市場価値, 入社後ギャップ, 組織文化

30代後半、初めての転職活動で直面した現実

私は30代後半で初めて転職を経験しました。新卒で入社して以来、一つの会社で15年近く働き、役職もついていました。社内での評価も一定以上あり、自分自身の市場価値についても、それなりにあるだろうと考えていました。しかし、いざ「外の世界」に飛び出してみると、想像していたものとは全く違う現実に直面することになったのです。

この記事では、長年同じ会社にいた私が初めての転職活動で経験したリアルな出来事、直面したギャップ、そしてそこから何を学び、どのようにキャリアを再構築していったのかをお話ししたいと思います。

「自社基準」と「市場基準」の大きな隔たり

転職活動を始めるにあたり、まずは自分のスキルや経験の棚卸しを行いました。社内での成功体験や、任されてきた大きなプロジェクトなどをリストアップし、「これなら市場でも通用するだろう」と自信を持っていたのです。

しかし、複数の転職エージェントと面談する中で、初めて自分の市場価値が、自分が考えていたほど高くないかもしれない、という現実に気づかされました。彼らの口から出たのは、「社内での評価は素晴らしいですが、これがそのまま外部で通用するかというと、必ずしもそうではありません」「〇〇さんの経験は、残念ながら特定の業界や企業文化に特化しすぎている可能性があります」といった言葉でした。

特に衝撃だったのは、特定のツールやプロセスに関する深い知識や経験が、他の多くの企業では使われていないため、評価対象になりにくいと指摘されたことです。自社では当たり前、あるいは最先端だと思っていたことが、「外の世界」では全く違う基準で動いていることを痛感しました。

書類選考、そして面接で見えた「井の中の蛙」

市場価値の評価に戸惑いながらも、いくつかの求人に応募を始めました。しかし、書類選考の通過率は想定よりもはるかに低く、面接に進めたとしても、一次面接で落ちてしまうケースが続きました。

面接では、これまでの経験について話すのですが、面接官からの質問の視点や深さが、自社のものとは全く異なりました。例えば、

などを問われることが多く、自社内の共通認識や前提知識に頼った説明しかできなかった自分に気づきました。また、他の候補者との比較で、「他社で多様な経験を積んできた候補者の方が、より幅広い視点や柔軟性を持っている」と感じる場面もありました。

長年同じ環境にいたことで、良くも悪くも「自社の常識」に染まっており、自分の経験を「他社で通用する言語」で説明する力が決定的に不足していたのです。これが、「井の中の蛙」状態だったのだと、恥ずかしながら初めて実感しました。

入社後に直面した組織文化と働き方のギャップ

幸いなことに、いくつかの失敗を経て、自分のアピール方法や選考対策を見直し、最終的にご縁のあった企業に転職することができました。しかし、入社後もまた新たなギャップに直面することになります。

前職は非常に歴史のある大企業で、意思決定は慎重かつ段階的、プロセスも厳格に定められていました。一方、転職先はよりスピード感を重視する組織でした。会議の進め方、資料の作り方、情報共有の仕方、そして日々のコミュニケーションのスタイルまで、何もかもが前職とは違いました。

前職で培った「丁寧さ」「石橋を叩いて渡る」ようなやり方は、新しい環境では「遅い」「非効率」と見なされがちでした。最初は「なぜこんなに雑なんだ」と感じることもありましたが、それは単に基準が違うだけで、その環境における最適なスピードや効率性を追求した結果なのだと理解するまでに時間がかかりました。

また、人間関係や社内の非公式なルールの違いにも戸惑いました。前職では阿吽の呼吸で理解できていたことが、新しい環境では全く通じない。積極的に自分から関わっていかなければ、情報も人間関係も築けないということを痛感しました。

この入社後のギャップへの適応は、転職活動自体と同じくらい、あるいはそれ以上にエネルギーを消耗するプロセスでした。前職のやり方に固執したり、新しい環境に馴染めずに孤立したりといった失敗も経験しました。

「外の世界」を知って得られた学びと今後のキャリア

初めての転職で多くの壁にぶつかり、失敗も経験しましたが、それ以上に貴重な学びを得ることができました。

最も大きな学びは、自身の「市場価値」を正しく、定期的に把握することの重要性です。自社内での評価だけではなく、外部の市場でどのようなスキルや経験が求められ、どのように評価されるのかを知ることが、自身のキャリア形成においていかに重要かを痛感しました。

また、「環境への適応力」や「変化に対する柔軟性」の必要性も学びました。長年同じ環境にいると、無意識のうちに思考や行動が固定化されてしまいがちです。新しい環境に飛び込むことで、自身の強みや弱みが浮き彫りになり、視野を広げることができます。

私の場合は、最初の転職で理想通りのスタートを切れたわけではありませんでしたが、そこで得た「外の世界」の視点や、異なる組織文化での働き方を経験したことが、その後のキャリアにおける重要な財産となりました。一度「外の世界」を知ると、もう「井の中の蛙」には戻れません。自身のキャリアを俯瞰的に捉え、戦略的に考える視点が身についたと感じています。

まとめ

30代後半での初めての転職は、長年培ってきた「自社の常識」が通用しない「外の世界」を知るプロセスであり、多くの戸惑いや困難を伴う可能性があります。市場価値の誤算、選考の壁、そして入社後の組織文化のギャップなど、理想論だけでは乗り越えられない現実があります。

しかし、これらの経験は自身のキャリアを次のレベルに進めるための貴重な学びとなります。自身の市場価値を正しく理解すること、異なる環境への適応力を高めること、そして自身の経験を汎用的なスキルとして言語化する力は、「外の世界」を知って初めて強く意識できるものです。

もしあなたが今、長年同じ会社にいて初めての転職を考えている30代後半であるなら、過度な自信も過度な不安も持たず、自身の市場価値や「外の世界」の現実を冷静に見極めることから始めてみてください。そして、たとえ理想通りに進まなくても、その経験から必ず多くの学びが得られるはずです。あなたのキャリアにとって、この挑戦が新たな扉を開く機会となることを願っています。