働き方を変えたくて転職。30代後半のワークライフバランス重視転職の成功と失敗談
30代後半、ワークライフバランスを求めた転職のリアル
30代も後半になると、キャリアアップや年収向上だけでなく、「働き方」そのものを見直したいという気持ちが強くなる方もいらっしゃるでしょう。体力的な変化、家族構成の変化、将来への不安など、理由は様々です。特に、長時間労働が常態化している環境に身を置いている方にとって、「ワークライフバランスの取れる働き方」は重要な転職理由の一つとなります。
しかし、現実はそう甘くありません。ワークライフバランスを重視した転職は、年収やキャリアパスとのトレードオフになることが多く、理想と現実のギャップに悩むケースも少なくありません。ここでは、実際に30代後半で働き方を変えるために転職活動を行った私の経験に基づき、成功談と失敗談を正直にお話しします。
なぜワークライフバランスを求めたのか
前職は、ある程度の規模のIT企業でプロジェクトマネージャーをしておりました。業務のやりがいはありましたが、納期の逼迫による残業時間の増加、休日出勤が常態化し、心身ともに疲弊していました。30代後半になり、将来的な体力の低下や、まだ小さな子供と過ごす時間をもっと増やしたいという思いが強くなりました。このままでは、高い年収を得られても健康を損なったり、家族との関係が疎遠になったりするのではないかという強い危機感を感じたのです。
そこで私は、「残業時間は月20時間以内」「リモートワークが可能」「年間休日120日以上」を絶対条件として転職活動を開始しました。
理想の働き方を求めた転職活動の実際
転職活動を始めた当初、私は比較的楽観的でした。自分のスキルや経験があれば、条件に合う企業はすぐに見つかるだろうと考えていたのです。しかし、これが最初の大きな誤算でした。
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求人情報の壁: 求人サイトやエージェントから紹介される求人情報は、年収レンジや業務内容は詳しく記載されていますが、実際の残業時間やリモートワークの実態については、抽象的な表現に留まることがほとんどでした。「ワークライフバランスを重視しています」「フレックスタイム制度あり」といった記載はあっても、それが具体的にどのような働き方を意味するのか、書類上だけでは判断できませんでした。
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年収とのトレードオフ: 私の希望する残業時間の少なさや柔軟な働き方を提示している企業は、概して前職よりも年収レンジが低い傾向にありました。特に、同じ役職や業務内容であっても、大手や急成長中の企業ほど長時間労働が前提となっている場合が多く、ワークライフバランスを重視すると中小企業やスタートアップ、あるいは成長が安定した企業の特定部門に限られる印象でした。希望条件を優先すると、年収が100万円以上下がるケースも覚悟する必要がありました。
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選考での自己アピール: 面接では必ず「なぜ転職を考えているのか」「弊社のどのような点に魅力を感じたか」といった質問があります。正直に「ワークライフバランスを求めている」と伝えると、ネガティブな印象を与えたり、「仕事への意欲が低いのではないか」と疑われたりするのではないかという不安がありました。そこで私は、「効率的な働き方を追求し、限られた時間で最大の成果を出すことに貢献したい」といったように、ワークライフバランスを求める理由をポジティブに言い換える工夫をしました。また、これまでの経験でどのように生産性を高めてきたかを具体的なエピソードを交えて説明するように努めました。
成功談:希望の働き方を実現できたケース
いくつかの企業の選考を経て、最終的に2社から内定をいただくことができました。一社は大手企業の新規事業部門、もう一社は社員数100名ほどのITベンチャーでした。
大手企業の内定は、年収面では前職維持が可能でしたが、面接官の話や社員の方から聞いた雰囲気から、やはり残業は避けられない可能性が高いと感じました。一方、ITベンチャーは年収が15%ほどダウンするものの、選考プロセスを通じて、代表や社員の方々が実際に効率的な働き方を実践しており、リモートワークも定着していることを具体的に確認できました。
ワークライフバランスを最優先するという当初の目的を貫き、私はITベンチャーへの転職を決意しました。入社後、実際に残業はほとんどなく、週の半分はリモートワークで働くことができています。年収は下がりましたが、心身の余裕が生まれ、家族と過ごす時間も格段に増えました。求人票や面接で感じた通りの働き方が実現できたことは、大きな成功でした。
この成功の要因としては、単に条件面だけでなく、選考プロセス全体を通じて企業の文化や社員の働き方を注意深く観察し、質問を重ねたことが挙げられます。カジュアル面談で実際に働くメンバーと話す機会を設けてもらったことも、実態を知る上で非常に有効でした。
失敗談:理想と現実のギャップに苦しんだケース
実は、上記のITベンチャーに内定をもらう前に、一度別の企業に転職して短期間で退職した経験があります。その企業も「残業ほぼなし」「リモートワーク推奨」を謳っており、面接での印象も良かったため入社を決めました。年収は前職より少し下がる程度で済み、条件面では満足していました。
しかし、入社後すぐに大きなギャップに直面しました。確かに制度としてはリモートワークやフレックスタイムがありましたが、実際には多くの社員が出社しており、リモートワークだと情報共有から遅れがちになる雰囲気がありました。また、「残業ほぼなし」というのも、担当業務によっては結局長時間労働せざるを得ない状況でした。さらに、企業文化として社員間のコミュニケーションが非常に希薄で、新しい環境に馴染むのに苦労しました。
結局、私が求めていた働き方はそこにはなく、むしろ前職以上に孤独感や疲弊を感じるようになり、数ヶ月で退職を決意しました。この失敗から学んだのは、制度があることと、それが組織文化として根付いていることは全く異なるということです。求人票の記載や面接官の言葉だけでなく、現場で働く社員の生の声や、企業文化をより深く理解しようと努めることの重要性を痛感しました。
ワークライフバランス重視の転職で後悔しないために
私の経験から、ワークライフバランスを重視した転職で後悔しないためには、以下の点が重要だと考えます。
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自身の「なぜ」を明確にする: なぜワークライフバランスを求めるのか、その背景にある具体的な理由(家族、健康、自己成長の時間など)を深く掘り下げ、自分にとって何が最も重要なのか優先順位をつけましょう。これにより、妥協できる点とできない点が明確になります。
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求人情報の裏側を見抜く努力: 「残業なし」「リモートワーク」といった耳障りの良い言葉だけでなく、それが企業全体の文化として根付いているのか、部署や役職によって差はないのかを徹底的に確認しましょう。面接官だけでなく、現場の社員と話す機会(カジュアル面談など)を設けてもらうのが有効です。クチコミサイトなども参考になりますが、全てを鵜呑みにせず、複数の情報源から判断することが大切です。
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年収やキャリアとのトレードオフを冷静に評価: ワークライフバランスを優先することで、一時的に年収が下がったり、キャリアパスが限定されたりする可能性は十分にあります。そのトレードオフを受け入れられるのか、長期的な視点で自身のキャリアやライフプランにどう影響するかを冷静に評価する必要があります。
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譲れない条件を明確に伝え、確認する: 入社後に「こんなはずではなかった」とならないよう、自身が譲れない条件(例: 「子供の送り迎えのため、〇時には退社したい」「週〇回はリモートワークをしたい」)については、選考段階で正直かつ具体的に伝え、企業側の考えや実績を確認するようにしましょう。
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エージェントを賢く活用する: ワークライフバランスに関する情報は、求人票に載りにくいため、エージェントの役割が非常に重要になります。希望条件を具体的に伝え、企業の内情に詳しいエージェントを見つけることが成功の鍵となります。複数のエージェントと面談し、信頼できる相手を見つけましょう。
まとめ
30代後半でのワークライフバランスを重視した転職は、単なる条件変更ではなく、自身の価値観に基づいた生き方の選択とも言えます。そこには、希望通りの働き方を実現できる成功もあれば、理想と現実のギャップに苦しむ失敗もあります。
大切なのは、自身の「なぜ」を明確にし、求人情報の表面的な言葉に惑わされず、企業の内情や文化を多角的に見抜く努力をすることです。そして、年収やキャリアとのトレードオフを受け入れる覚悟と、譲れない条件を正直に伝える勇気を持つことです。
私の経験が、これからワークライフバランスを求めて転職活動をされる方の、少しでも現実的で役立つ情報となれば幸いです。