プレイヤーからマネージャーへ。30代後半、未経験マネジメント職への転職活動リアル
30代後半で「マネージャー」を目指す理由
30代も後半に差し掛かり、これまでのプレイヤーとしてのキャリアには一定の自信がついてきました。しかし、同時に感じ始めていたのが「このままで良いのか」という漠然とした不安です。専門性を深める道もありましたが、より大きな責任を持ち、組織やチームを動かすことに魅力を感じるようになりました。それが、初めてマネジメント職への転職を考え始めたきっかけです。同世代の友人が管理職に昇進していくのを見る中で、自分のキャリアパスを改めて見つめ直したという側面もありました。
プレイヤーとして成果を出すことと、マネージャーとしてチームを率いることは全く異なるスキルが求められます。自分にそれができるのかという不安はありましたが、新しい挑戦への期待の方が大きかったのを覚えています。
未経験マネージャーの市場価値:現実的な評価を知る
マネジメント経験がない状態でマネージャー職を目指す場合、最も気になるのは自身の市場価値です。これまでの経験はプレイヤーとしての成果や専門知識が中心であり、マネジメントスキルを証明できる具体的な実績がありません。
いくつかの転職エージェントに相談しましたが、反応は様々でした。「ポテンシャル採用」という見方をしてくれるエージェントもいれば、「やはりマネジメント経験がないと厳しい求人が多い」と現実を突きつけられることもありました。年収についても、現職でプレイヤーとして得ていた年収を維持するのが難しいケースや、役職なしのスペシャリスト職を勧められることも少なくありませんでした。
これは、多くの企業が即戦力となるマネジメント経験者を求めていることの表れだと思います。自分の場合は、幸いにも現職でチームリーダーのような役割を非公式に担っていた経験や、後輩育成に関わった経験があったため、それをアピールポイントとすることができましたが、それでも「正式なマネジメント経験」とは見なされない壁を感じました。
市場価値を把握するためには、複数のエージェントと話すこと、そして実際に求人に応募して選考のフィードバックを得ることが非常に重要だと感じました。
選考で見られたポイントと対策のリアル
未経験からマネージャー職を目指す転職活動では、書類選考と面接で特に重視されるポイントが異なります。
書類選考では、これまでのプレイヤーとしての「成果」を具体的に記述することに加え、マネジメント職で活かせると思われる「リーダーシップ」「課題解決力」「コミュニケーション能力」「後輩育成経験」などを盛り込む工夫をしました。単に事実を羅列するのではなく、「チームで〇〇の課題を解決し、〇〇の成果を出した」「後輩に対して〇〇のような育成を行い、〇〇ができるようになった」など、行動と結果をセットで記述することを意識しました。
面接では、なぜマネージャーを目指すのか、どのようなマネジメントをしたいのかといった「意欲」や「ビジョン」が強く問われました。また、過去の経験からリーダーシップやチームワークを発揮したエピソードを具体的に話すことが求められました。「あなたはどうチームをまとめますか」「チームメンバーが期待通りのパフォーマンスを出せない場合どうしますか」といった、マネジメントにおける具体的なシチュエーションに関する質問も多かったです。
正直なところ、これらの質問に対して「正解」があるわけではありません。これまでの経験に基づき、自分なりの考え方やアプローチを論理的に説明することが重要だと感じました。いくつか面接で落ちた際には、「マネジメント経験がないことへの懸念が払拭できなかった」「質問への回答が抽象的すぎた」といったフィードバックをもらい、面接での話し方を改善していきました。特に、過去の経験を語る際には、単なる武勇伝にならないよう、自分がどのように考え、行動し、その結果どうなったのかを分かりやすく伝えることが大切です。
成功と失敗:内定の裏側と後悔
最終的に、いくつか企業から内定をいただくことができました。内定に至った企業に共通していたのは、私のプレイヤーとしての専門性や実績を評価しつつ、これまでのチームでの貢献や後輩育成といった経験からマネジメントへの「ポテンシャル」を見出してくれた点です。面接での「なぜマネージャーになりたいのか」という問いに対する熱意と、将来のビジョンを具体的に語れたことも大きかったかもしれません。
一方で、うまくいかなかった選考もありました。書類で落ちた企業、一次面接で落ちた企業。それらの原因を探ると、やはり自身のマネジメント経験の不足を補うだけのアピールができていなかったり、企業が求める人物像と私の強みがマッチしていなかったりといった理由が考えられます。特に、より規模の大きな組織や、既に強固なマネジメント体制がある企業では、経験者の壁が高いと感じました。
後悔があるとすれば、もう少し早い段階からマネジメントに関わる機会を現職で積極的に作っておけばよかったということです。非公式なリーダーシップ経験はアピールできましたが、正式な役職や権限のもとでのマネジメント経験があれば、選考の通過率は上がったのではないかと思います。また、マネジメントに関する書籍を読んだり、研修に参加したりといったインプットをもっと増やしておくべきだったとも感じています。
入社後に直面した現実:理想とギャップ
念願叶って初めてマネージャー職として入社しましたが、入社後に直面した現実には、想像以上のギャップがありました。
プレイヤー時代は自分の成果に集中できましたが、マネージャーはチーム全体の成果に責任を持たなければなりません。メンバーのモチベーション管理、育成、評価、タスクの優先順位付け、部署間の調整、予期せぬトラブル対応など、業務内容は多岐に渡り、常にマルチタスクをこなす必要があります。
特に難しかったのは、メンバーの多様な個性やスキルレベルに対応しながら、チームとしてのパフォーマンスを最大化することです。プレイヤーとしては優秀だった私が、マネージャーとしては全くの新人。自分の得意な領域を自分でやる方が早いと感じる場面もありましたが、それではメンバーは成長せず、チーム全体の生産性も上がりません。いかにメンバーを信頼し、任せ、サポートしていくかというマネジメントの基本を、実践の中で痛感しました。
また、理想としていたマネジメントスタイルと、実際の職場で求められるスタイルが異なることもありました。企業文化や組織体制によって、マネージャーに期待される役割や権限は大きく変わります。入社前の情報収集だけでは見えにくい部分であり、ここがミスマッチになると苦労する可能性があると感じました。
未経験からマネージャーを目指す人への示唆
私の経験から、30代後半で未経験からマネージャー職への転職を目指す方へいくつかお伝えしたいことがあります。
まず、自身の市場価値を冷静に見極めることです。マネジメント経験がないことはハンディキャップになる可能性があります。これまでのプレイヤーとしての実績に加え、リーダーシップやコミュニケーション能力など、マネジメントに繋がるポテンシャルをいかに具体的にアピールできるかが鍵となります。複数のエージェントを活用し、客観的な意見を聞くことをお勧めします。
次に、なぜマネージャーになりたいのか、どのようなマネジメントをしたいのか、自分自身の考えをしっかりと固めることです。面接では必ず問われる部分であり、ここが曖昧だと企業側も採用に踏み切りにくいでしょう。過去の経験からマネジメントに繋がるエピソードを掘り起こし、論理的に説明できるように準備してください。
そして、入社後のギャップを理解しておくことです。マネージャーの仕事は想像以上に幅広く、責任も大きいです。プレイヤー時代の働き方とは全く異なります。新しいスキルを学び続け、試行錯誤を繰り返しながら成長していく覚悟が必要です。企業文化やマネジメントスタイルについても、選考過程で可能な限り情報収集することが、ミスマッチを防ぐために重要です。
初めてのマネジメント職への転職は、確かに難易度が高い挑戦です。しかし、これまでの経験で培った専門性や人間力を活かしつつ、新しいスキルを習得していくことで、キャリアの幅を大きく広げることができます。リアルな壁やギャップはありますが、それを乗り越えた先に得られるやりがいも大きいと感じています。