30代後半転職、適性検査とリファレンスチェックの落とし穴。リアルな経験談と対策
30代後半の転職活動では、これまでの経験やスキルが問われる書類選考や面接に注力される方が多いかと思います。確かにこれらは選考の重要な要素ですが、実は書類・面接を通過した後にも、意外な落とし穴が潜んでいることがあります。それが、適性検査(Webテスト含む)やリファレンスチェックです。
現職からしばらく離れて適性検査を受けていない方、またはリファレンスチェックというプロセスに馴染みがない方にとって、これらの選考要素は見落としがちであり、十分な準備をしないまま臨んで失敗するケースも少なくありません。今回は、実際に30代後半で転職活動を経験した方々のリアルな声をもとに、適性検査とリファレンスチェックの現実、そこで直面した課題、そしてその対策についてご紹介します。
30代後半の転職における適性検査のリアル
「適性検査なんて新卒のとき以来で、すっかり油断していました。」これは、複数の方から聞かれた言葉です。30代後半になると、実務経験が重視されるため、適性検査が課されるケースは新卒時ほど多くないだろう、あるいは多少点数が低くても経験でカバーできるだろう、と考えてしまうことがあります。しかし、企業によっては今なお重視しているところがあり、特に大企業や一定規模以上の企業では足切りとして使われることも少なくありません。
ある38歳の営業企画職の男性は、書類選考と一次面接をスムーズに通過し、手応えを感じていました。しかし、次のステップで案内されたWebテスト(SPI形式)でつまづいてしまったといいます。 「数年ぶりに、SPIの対策本を引っ張り出して少し眺めた程度で受けてしまいました。言語分野はまだしも、非言語分野は計算方法などをすっかり忘れていて、時間内に全く終わりませんでした。結果、次の面接に進めず、不合格の連絡を受け取りました。まさかここで落ちるとは思っていませんでしたし、非常に悔しかったです。」
このケースのように、適性検査は学力や知識を測るというよりは、論理的思考力や基礎的な能力、そして性格特性を見るためのものです。特に非言語分野(数学的な能力)は、解法を覚えていないと時間がかかってしまいます。
一方で、しっかりと対策してクリアした方もいます。 「転職活動を始めるにあたり、エージェントから『企業によっては適性検査がありますよ』とアドバイスされ、念のため対策することにしました。書店で最新のSPI対策本を購入し、通勤電車の中で毎日30分ほど解くようにしました。実際に何社か選考で適性検査がありましたが、落ち着いて取り組むことができ、問題なく通過できたと感じています。」(36歳・ITエンジニア男性)
【対策と学び】
- 油断は禁物: 30代後半でも適性検査が課される可能性は十分にあります。事前に企業の選考プロセスを確認し、対策が必要かを見極めましょう。
- 早めの準備: 数年ぶりに受ける場合は、基礎的な解法を忘れている可能性が高いです。市販の対策本やWeb上の模擬試験などを活用し、早めに準備を始めることが重要です。
- 時間配分を意識: 適性検査は時間との戦いです。問題集を解く際も、時間を計って取り組む癖をつけましょう。
- エージェントに相談: 担当のエージェントに、志望企業の選考プロセスに詳しいか、適性検査対策に関する情報があるかなどを確認してみましょう。
30代後半の転職におけるリファレンスチェックのリアル
リファレンスチェックは、候補者の過去の勤務状況や実績、人柄などを、候補者が指定した元上司や同僚など第三者から確認するプロセスです。特にマネージャー候補や責任あるポジションの選考で実施されることが多い傾向にあります。日本ではまだ馴染みが薄いと感じる方もいるかもしれませんが、外資系企業や成長中のベンチャー企業では一般的になりつつあります。
このプロセスで悩むのが、「誰に依頼するか」「現職に知られずにできるのか」といった点です。
「内定が近づいた企業からリファレンスチェックをお願いされました。慌てて、以前お世話になった元上司に連絡を取りましたが、急な連絡だったこともあり、少し困惑させてしまったかもしれません。結局、快く引き受けていただけましたが、もっと早く相談しておくべきでした。」(37歳・マーケティング職女性)
リファレンスチェックは、企業が面接だけでは見えにくい候補者の側面を知るために行われます。コミュニケーション能力、リーダーシップ、チームワーク、困難への立ち向かい方など、多様な質問が投げかけられます。
あるIT企業のマネージャー候補として選考を受けていた39歳の男性は、リファレンスチェックで想定外の質問をされたといいます。 「依頼した元同僚からは、『〇〇さんの仕事ぶりは素晴らしく、チームをよくまとめていました』というポジティブな評価をもらえたと聞いていたのですが、企業側からは『彼は目標達成に向けて、周囲を巻き込むのが得意でしたか?それとも単独で推進するタイプでしたか?』といった、より具体的な行動特性に関する質問があったようです。私の強みだと思っていた『周囲を巻き込む力』について、元同僚はそこまで強く意識していなかったようで、回答が少し曖昧になってしまったと後から聞きました。幸い最終面接で挽回できましたが、リファレンスチェックで何を聞かれるかをもっと具体的に共有しておくべきだったと反省しました。」
失敗談としては、依頼したリファレンスパーソンが候補者の能力を十分に理解していなかった、あるいはポジティブな評価を伝えきれなかったといったケースが挙げられます。また、現職の同僚に依頼した場合、転職活動を知られてしまうリスクも伴います。
一方で、リファレンスチェックを味方につけた方もいます。 「私は、現職の退職意向を伝えた後に、信頼できる元上司と現職の同僚(既に転職経験あり)にリファレンスパーソンをお願いしました。依頼する前に、企業の求める人物像や、応募ポジション、求められる人物像、そして私が特にアピールしたい経験・スキルについて詳しく伝え、協力をお願いしました。結果として、面接で伝えきれなかった私の強みや実績を、第三者の視点から補強してもらうことができ、それが内定に繋がったと感じています。」(35歳・企画職女性)
【対策と学び】
- 事前に準備・依頼: リファレンスチェックが実施される可能性を考慮し、信頼できるリファレンスパーソン候補をリストアップしておきましょう。可能であれば、転職活動開始前や、選考が進んできた段階で、協力をお願いしておくとスムーズです。
- 企業が知りたいことを共有: 依頼するリファレンスパーソンには、応募企業の事業内容、応募ポジション、求められる人物像、そしてあなたが特にアピールしたい点などを具体的に伝え、どのような点を話してほしいか、協力をお願いしましょう。
- 正直さと信頼性: リファレンスチェックは、候補者の自己申告の裏付けを取る目的もあります。正直に、そして具体的なエピソードに基づいて回答してくれる方に依頼することが重要です。
- 現職への配慮: 現職に知られたくない場合は、退職した元上司や元同僚に依頼するのが一般的です。企業によっては、現職以外の方でも受け付けてくれる場合もありますので、事前に確認が必要です。
見落としがちな選考要素への対策が、成功への鍵となる
30代後半の転職活動では、これまでの職務経歴や面接でのアピールが中心になると考えがちですが、適性検査やリファレンスチェックといった、一見脇役に見える選考プロセスも、合否を左右する重要な要素となり得ます。
適性検査は、基本的な能力や潜在的なポテンシャルを測るフィルターとして機能し、リファレンスチェックは、候補者の実像を多角的に把握するための重要な手段となります。特に、難易度の高いポジションや企業への転職を目指す場合は、これらのプロセスも抜かりなく対策することが求められます。
書類や面接対策に加えて、適性検査の準備、そしてリファレンスチェックへの備えも計画的に行うことで、選考プロセスの後半で予期せぬつまづきを防ぎ、成功へ繋げることができるでしょう。自身の経験や強みを整理すると同時に、選考の全体像を理解し、各ステップで求められる準備をしっかりと行うことが、30代後半の転職を成功させるための重要な鍵となります。