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30代後半の転職、英語力はどこまで通用する?評価された経験・評価されなかった経験談

Tags: 英語力, 転職, 30代後半, 面接対策, キャリア戦略

30代後半の転職活動における英語力の価値とは

30代後半になり、これまでのキャリアと向き合った結果、よりグローバルな環境や専門性を活かせる職への転職を考える方は少なくありません。その際、「英語力」を自身の武器としてアピールしようと考える方も多いでしょう。確かに、一定レベル以上の英語力は多くの企業で評価されるスキルですが、その価値は単純ではありません。

実際の転職活動では、自身の持つ英語力が期待通りに評価されることもあれば、そうでないこともありました。本記事では、私自身の30代後半での転職活動を通じて、英語力がどのように選考に影響したのか、具体的にどのような経験が評価され、あるいはされなかったのかを正直にお伝えします。これから英語力を活かした転職を目指す方にとって、現実的な視点を得る一助となれば幸いです。

英語力を武器にしようとした背景と最初の誤算

前職では国内市場が中心でしたが、海外企業との連携プロジェクトに関わる機会が増え、自身の英語力が活かせる場があることを実感しました。TOEICのスコアは800点台後半で、ビジネスメールや簡単な会議でのコミュニケーションには支障がないレベルだと認識していました。30代後半になり、これまでの経験とこの英語力を掛け合わせれば、より市場価値の高いキャリアパスが開けるのではないかと考え、転職活動をスタートしました。

最初にいくつか応募したのは、外資系企業の日本法人や、海外事業を積極的に展開している日系企業でした。書類選考では、TOEICスコアや海外関連プロジェクトの経験を強調しました。いくつかの企業からは書類通過の連絡があり、手応えを感じていました。

しかし、最初の面接で早くも誤算に気づきました。面接官は私の英語力について深掘りすることなく、これまでの職務経験やリーダーシップ経験について集中的に質問してきました。英語での自己紹介や簡単な質疑応答はありましたが、それが選考の決め手になるような雰囲気ではありませんでした。また、別の面接では、高い英語力が求められるポジションにも関わらず、他の候補者の「業界知識」や「特定分野での専門性」が私よりも明らかに高かったため、英語力だけでは差別化できない現実を突きつけられました。

評価された「英語力」の具体例

もちろん、英語力がプラスに働いた経験も多々ありました。特に評価されたと感じるのは、単に語学力があるだけでなく、それを具体的なビジネスシーンでどのように活用してきたかを示すことができた場合でした。

ある外資系企業での面接では、「前職で海外拠点との交渉をリードした経験」について深く質問されました。資料作成、メールでのやり取り、オンライン会議でのファシリテーションなど、一連のプロセスで英語をどのように使用し、どのような成果を上げたのかを具体的に説明しました。この時は、単なる語学力ではなく、「ビジネス遂行能力としての英語力」が高く評価されたと感じます。面接官は「TOEICの点数も素晴らしいですが、それ以上に、困難な交渉を英語でまとめた経験は貴重ですね」とコメントしていました。

また、別のケースでは、日系企業の海外事業部門の面接で、過去に英語で作成した企画書やレポートについて説明する機会がありました。これらのドキュメントは、単に和訳したものではなく、海外のメンバーにも伝わるように文化的な背景や表現にも配慮して作成した点をアピールしました。結果として、「海外とのコミュニケーションに必要な細やかな配慮ができる」という点で評価につながりました。

つまり、30代後半の経験者採用においては、単にTOEICのスコアが高いことや、日常会話ができることだけでは不十分であり、「英語を使って、どのようなビジネス上の課題を解決し、どのような成果を上げたのか」という具体的なエピソードが重要になるという学びがありました。

評価されなかった「英語力」とその背景

一方で、期待していたほど英語力が評価に繋がらなかったケースもありました。これは主に、以下のような状況で経験しました。

一つは、他のスキルや経験が圧倒的に重視されるポジションに応募した場合です。例えば、高度な技術専門性や特定の業界における深い知見が求められるポジションでは、英語力はあくまで「プラスアルファ」のスキルとして見なされることが多く、その有無が合否を分ける決定的な要因にはなりにくいと感じました。あるIT企業の面接では、私の英語力について触れられることはほとんどなく、ひたすら技術的な質問が続きました。

二つ目は、企業が求める英語レベルと自身のレベルにギャップがあった場合です。TOEIC800点台後半であっても、ネイティブレベルでの複雑な交渉や、専門性の高い議論を英語で行うことが日常的に求められるポジションでは、面接官からの英語での質問や、こちらからの英語での回答の様子から、「求めるレベルには達していない」と判断されているのが伝わってきました。特に、流暢さだけでなく、瞬時の理解力や適切な言葉選びが問われる場面では、準備不足を感じました。

三つ目は、採用プロセスの中で英語力を測る機会が限定的だった場合です。書類選考で英語関連の経験を記載しても、その後の面接が全て日本語で行われ、英語でのコミュニケーション能力を直接評価されずに終わるケースもありました。これは、企業側の選考プロセスや面接官のスキルにもよる部分ですが、応募者としては英語でのアピール機会を意図的に作る、あるいは選考プロセス中に英語での面談をリクエストするなどの工夫が必要かもしれません。

これらの経験から、30代後半での転職において、英語力は強力な武器になり得ますが、それが万能ではないこと、そしてその評価は「どの企業」の「どのポジション」で「どのようにアピールするか」によって大きく変わるという現実を痛感しました。

英語力を活かした転職成功のためのノウハウと示唆

私の経験を踏まえ、30代後半で英語力を活かした転職を目指す方への示唆として、以下の点を挙げさせていただきます。

1. 「ビジネス上の英語活用経験」を具体的に言語化する

単に「英語ができます」「TOEIC〇点です」と言うだけでなく、過去の職務経歴において、英語を使ってどのような業務を遂行し、どのような成果に繋げたのかを具体的なエピソードとして準備してください。会議でのファシリテーション、海外支店との連携、英文契約書のレビュー補佐、海外顧客への提案、英文レポート作成など、具体的なシーンを描写できるようにすることが重要です。これにより、採用側はあなたの英語力がビジネスにおいてどのように役立つのかを具体的にイメージできます。

2. 応募企業の「求める英語レベル」と「英語が使われるシーン」を徹底的に把握する

企業の募集要項に「ビジネスレベルの英語力」と記載されていても、その具体的なレベル感や、実際に業務で英語を使用する頻度や内容は企業や部署によって大きく異なります。カジュアル面談や面接の機会を通じて、「具体的にどのような場面で英語を使いますか」「どの程度の頻度で、どのようなレベルのコミュニケーションが求められますか」といった質問を積極的に行い、自身のスキルとのミスマッチがないかを確認することが非常に重要です。

3. 英語力以外の「核となる専門性や経験」を明確にする

30代後半の転職は、多くの場合、これまでの経験や専門性が重視されます。英語力は、その専門性や経験を活かせるフィールドを広げるためのツールとして捉えるべきです。自身のキャリアの軸となるスキルや経験は何なのかを明確にし、英語力がそれをどのように補強し、価値を高めるのかを戦略的にアピールすることが成功の鍵となります。英語力頼みで、他の経験や専門性が不足していると判断されれば、期待する評価は得られにくいでしょう。

4. 必要であれば、ターゲットに合わせた英語力向上に取り組む

もし応募したいポジションで求められる英語レベルが現在のスキルを上回るようであれば、短期間でも集中的な学習やトレーニングを検討することも有効です。特に、面接での受け答えや、自身の専門分野に関する英語での説明能力は、付け焼き刃では難しい部分もあるため、日頃からの準備が重要です。

まとめ

30代後半の転職活動において、英語力は間違いなく強力な武器となり得ます。しかし、それは単なる語学力の高さではなく、「ビジネスシーンで英語を活用し、成果を上げた経験」として具体的にアピールできた場合に、より価値を発揮します。

私の経験から言えるのは、英語力に過信も過小評価もせず、自身のキャリアにおける他のスキルや経験との組み合わせの中で、英語力をどのように位置づけ、どのような企業でどのように活かせるのかを冷静に見極めることが重要だということです。期待通りに評価されなかった経験も、それは自身の市場価値を正確に把握し、その後の戦略を練り直すための貴重な学びとなりました。

これから英語力を活かした転職を目指す皆様も、ぜひご自身の経験を棚卸し、「英語を使って何ができるのか」を具体的に言語化する作業から始めてみてください。そして、応募企業が本当に求めている英語力とは何かをしっかりと見極めることで、より現実的で成功確度の高い転職活動を進めることができるでしょう。