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30代後半、副業と両立させた転職活動の現実。時間管理の壁、企業への伝え方、成功と失敗

Tags: 転職活動, 副業, 30代転職, キャリア形成, 時間管理

はじめに

30代も後半に差し掛かり、現職でのキャリアを積み重ねる一方で、「このままで良いのか」と漠然とした不安を感じる方も多いでしょう。市場価値の確認、新たな挑戦、キャリアアップを目指す中で、転職活動は有力な選択肢の一つです。加えて、近年では「働き方改革」や技術の進展により、副業を並行して行うビジネスパーソンが増加しています。

このような状況下で、「現職を続けながら、副業も行い、さらに転職活動も進める」という、いわばトリプルワークに挑む30代後半の方も少なくありません。しかし、これは時間的、精神的に非常に負荷の高い取り組みです。理想と現実のギャップに直面し、苦労するケースも多く見られます。

本記事では、30代後半で副業をしながら転職活動を行った経験者のリアルな声に基づき、直面した課題、時間管理の壁、企業への副業経験の伝え方、そして成功談と失敗談をご紹介します。これらの経験から得られる示唆は、同様の状況にある方々にとって、自身の転職活動やキャリア形成を現実的に見つめ直す一助となるはずです。

副業と両立する転職活動の「現実」に直面する

副業をしながらの転職活動は、現職のみの場合と比較して、乗り越えるべき壁が多く存在します。最も顕著なのは、物理的な時間の不足です。

時間管理の壁と疲労

平日は現職の業務に加え、退勤後に副業のタスクをこなす。週末も副業に時間を費やす。そんな状況で、求人サイトの確認、企業研究、応募書類の作成、面接対策、そして実際の面接といった転職活動の時間を捻出するのは容易ではありませんでした。

ある経験者は、「平日は本業でクタクタになり、夜は副業。転職活動は深夜か、副業の合間に無理やり詰め込むしかなかった」と語っています。睡眠時間が削られ、常に疲労感を抱えたまま活動を続けることは、精神的な負荷も大きかったようです。疲労から集中力が低下し、応募書類にミスが生じたり、面接で本来の力を発揮できなかったりといった失敗も経験しました。

情報収集と応募のタイミング

時間がない中で効率的に情報収集を行うのは至難の業です。良い求人はすぐに締め切られることも多く、スピード感が求められますが、日中にじっくり企業サイトを見たり、エージェントと連絡を取ったりする時間が取れませんでした。結果として、「魅力的な求人を見つけた時には、既に締め切り直前だった」「エージェントからの連絡にすぐに返信できず、機会を逃した」といったケースも見られます。

面接調整の難しさ

書類選考を通過しても、面接は通常、企業の営業時間内に行われます。Web面接が増えたとはいえ、時間の調整は依然として大きな課題です。現職の業務や副業の納期を縫って面接時間を確保し、必要に応じて有給休暇を取得する必要がありました。しかし、副業の内容によっては、本業とは別に納期やミーティングがあり、気軽に休みが取れない状況もありました。結果的に、興味のある企業の面接を断念したり、無理なスケジュールで臨んでパフォーマンスが落ちたりといったことが起こり得ます。

企業への「副業経験」の伝え方

副業経験は、転職活動においてプラスにもマイナスにも捉えられ得る要素です。どのように伝えるかは、選考結果を左右する重要なポイントとなります。

副業経験はどのように評価されるのか

企業側が副業経験者を見る視点は様々です。ポジティブな側面としては、 - 自律的にスキルアップや収入向上に取り組む向上心 - 本業とは異なる領域での経験・スキル - 時間管理能力やマルチタスク遂行能力 - 副業を通じた人脈や最新情報のキャッチアップ能力 などが評価される可能性があります。

一方で、ネガティブな側面としては、 - 本業へのコミットメントが低いのではないか - 副業に時間を取られ、疲弊しているのではないか - 情報漏洩のリスクはないか(特に競合他社での副業の場合) - 組織の一員としての協調性に欠けるのではないか といった懸念を持たれることもあります。

面接での具体的な説明方法

面接で副業について質問された際、正直に話すか、あるいは伏せておくべきか悩む方もいるでしょう。原則として、事実と異なることを伝えるのは避けるべきです。正直に話す場合、どのように伝えるかが重要になります。

ある成功例では、「副業は、現職では得られない特定の技術スキルを習得するために始めました。そこで得た〇〇の経験は、御社で求められる△△の業務に直接活かせると考えています」のように、副業の目的と得られた経験、そしてそれが応募企業にどう貢献できるかを明確に関連付けて説明しました。副業が単なる小遣い稼ぎではなく、キャリアアップやスキル習得のための戦略的な活動であることを示せたことが、評価に繋がったようです。

逆に失敗例としては、「特に目的はなく、誘われたから始めました」「単に収入を増やしたくて」といった曖昧な理由を述べたり、副業で得たスキルと応募企業との関連性を具体的に説明できなかったりした場合です。企業側から「キャリアに対する軸がない」「本業への集中力が削がれるのでは」といった懸念を持たれてしまう可能性があります。

応募書類(職務経歴書など)に副業経験を記載するかどうかも判断が分かれます。応募職種と関連性の高い副業であれば、スキルや経験をアピールするために記載する価値はあります。その際も、具体的な内容や成果を簡潔に記述し、面接で深掘りされることを想定しておく必要があります。関連性が低い、あるいは説明が難しい場合は、あえて記載しないという選択肢もあります。

副業経験が「成功」に繋がったケース

副業経験が転職活動においてプラスに作用し、成功に繋がったケースも確かに存在します。

ある方は、本業ではマネジメント業務が中心でしたが、副業で特定のプログラミングスキルを磨いていました。転職活動で、そのスキルを活かせるプレイヤー寄りのポジションに応募した際、副業で培った実践的なスキルと最新知識が評価され、内定を獲得しました。これは、本業だけでは証明できなかったスキルを、副業を通じて証明できた典型的な例と言えます。

また、副業で築いた人脈が、非公開求人の情報を得るきっかけになったり、応募企業の内部情報を聞けたりして、選考対策に役立ったというケースもあります。副業が、本業とは異なるコミュニティや情報源へのアクセスを提供し、転職活動の視野を広げる効果を持ったと言えます。

さらに、副業で安定的な収入を得ていたことで、精神的な余裕を持って転職活動に臨めたという声もあります。経済的なプレッシャーが少ない分、焦らずに自分のキャリアプランに合った企業をじっくり選ぶことができ、結果的に納得のいく転職を実現できたというケースです。

副業経験が「失敗」に繋がった・誤算だったケース

一方で、副業が転職活動の足かせとなったり、予想外のトラブルに繋がったりしたケースもあります。

最も多い失敗は、前述のように、副業に時間を取られすぎて本業や転職活動がおろそかになることです。「副業の納期に追われ、応募書類の提出が遅れてしまった」「面接対策の時間が取れず、準備不足で臨んでしまった」といった経験談は少なくありません。複数のタスクを抱えることでキャパシティを超え、どれも中途半端になってしまうリスクは常に伴います。

また、企業から副業に対するネガティブな印象を持たれてしまったケースです。面接で正直に副業の状況を説明したところ、「本業に集中できるのか」「うちの業務は副業をする余裕はない」といった懸念を払拭できず、不採用に至ったという経験談もあります。特に、長時間労働が常態化している企業や、社内での結束を重視する企業では、副業に対する理解が得られにくい場合があります。

副業の内容が、応募企業と競合関係にある場合の情報管理も注意が必要です。副業で得た知見をアピールしたい一方で、機密保持契約に抵触しないか、あるいは企業側に不信感を与えないかといった懸念から、十分に説明できなかったというケースもあります。

副業と両立する転職活動を成功させるための示唆

30代後半で副業と両立しながら転職活動を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

目的意識の明確化

なぜ副業をするのか、そしてなぜ転職をするのか、その目的を明確にすることが出発点です。副業が単なる収入源なのか、スキルアップのためなのか、あるいはネットワーク構築のためなのか。そして、転職で何を実現したいのか。これらの目的が明確であれば、副業にかける時間や労力の配分、転職活動の軸が定まりやすくなります。副業経験をどのようにキャリアに繋げたいのかを言語化しておくことも重要です。

徹底した時間管理と体調管理

限られた時間を最大限に活用するためには、計画的な時間管理が不可欠です。週単位、日単位で具体的なタスクとそれに充てる時間を決め、優先順位を付けて実行する必要があります。また、無理なスケジュールは心身の疲弊を招き、全てが破綻するリスクを高めます。適切な休息を取り、体調を整えることの重要性を認識しておくべきです。

企業への建設的なコミュニケーション

副業経験を伝える際は、単に「副業をしている」という事実だけでなく、それが自身のキャリアにどのように貢献しているのか、そして応募企業でどのように活かせるのかを具体的に説明することが重要です。企業が懸念しがちな「本業へのコミットメント」についても、例えば「副業で培った効率化スキルを本業にも活かせている」「副業は自己成長のためであり、御社での業務に支障をきたすものではない」のように、積極的に払拭する姿勢を見せることも有効です。嘘をつくのではなく、事実をどのように建設的に伝えるかの戦略が必要です。

信頼できるエージェントの活用

副業の状況や、それが転職活動に与える影響について正直に相談できる、信頼できる転職エージェントを見つけることも有効です。副業経験のある求職者に対する企業側の見方や、適切なアピール方法についてアドバイスをもらえる可能性があります。また、多忙な中で情報収集や面接調整をサポートしてもらうことで、自身の負担を軽減することができます。

結論

30代後半で副業を並行しながら行う転職活動は、時間管理や情報収集、企業への説明など、様々な困難を伴います。現職と副業、そして転職活動というトリプルワークは、精神的・肉体的な負荷が非常に大きい現実があります。

しかし、副業で得たスキルや経験、そして副業をやり遂げる自己管理能力は、転職市場において大きな強みとなる可能性を秘めています。重要なのは、副業を「片手間」の活動としてではなく、自身のキャリア形成の一環として捉え、目的意識を持って取り組むことです。

自身の状況を正確に把握し、計画的に時間管理を行い、副業経験を建設的に伝える戦略を持つこと。そして、必要に応じて外部のサポートも活用すること。これらが、副業と両立しながらも、納得のいく転職を実現するための鍵となります。リアルな成功談と失敗談から学び、自身の状況に合わせた最適なアプローチを見つけることが、30代後半の複雑なキャリア形成を成功させる一歩となるでしょう。