転職リアルボイス

30代後半、育児や介護と両立した転職活動の現実。希望条件の妥協と後悔、成功要因のリアル

Tags: 転職, 30代後半, 育児, 介護, 両立, ワークライフバランス, 失敗談, 成功談

30代後半、ライフイベントとキャリアの両立という壁

30代後半は、多くの方にとってキャリアの転換期であると同時に、育児や親の介護といったライフイベントと向き合う時期でもあります。私自身もこの時期に転職活動を経験しましたが、それは想像していた以上に困難な道のりでした。仕事でのさらなる成長や新しい環境への挑戦を求める一方で、家族の状況が自身の選択肢に大きな制約を与える現実を痛感したのです。

この記事では、30代後半で育児と介護という二重の負担を抱えながら行った私の転職活動のリアルな経験をお伝えします。時間管理の困難さ、希望条件の妥協、企業選びでの苦労、そしてそこから得られた後悔や学びについて、正直にお話しすることで、同じような状況にある方や今後直面しうる方の参考になれば幸いです。

転職活動開始前の状況と甘い見通し

転職を考え始めたきっかけは、現職での成長の鈍化と、将来的なキャリアへの漠然とした不安でした。同時に、当時まだ小さかった子供の育児と、遠方に住む親の介護が少しずつ現実味を帯びてきており、「今の働き方では、この先両立が難しいかもしれない」という危機感も芽生えていました。

転職先の条件としては、これまでの経験を活かせる業務内容であることはもちろん、年収アップ、そして最も重視していたのは「時間と場所の柔軟性」でした。具体的には、リモートワークが可能であること、フレックスタイム制があること、そして急な休みや遅刻・早退に対して理解がある組織文化であることです。「これまでの経験とスキルがあれば、条件を多少絞っても良い企業は見つかるだろう」と、当時は楽観的に考えていました。

直面した時間管理の壁と情報収集の困難

しかし、実際に活動を始めてすぐに、最初の壁にぶつかりました。それは「時間がない」という現実です。

日中は現職の業務があり、夜は育児や家事、週末は親の介護や子供の相手。転職活動に充てられる時間は、子供が寝静まった後の深夜か、早朝しかありませんでした。求人情報の検索、応募書類の作成、企業研究、そして面接対策。どれも集中力が必要な作業ですが、疲労困憊の中で進めるのは非常に非効率でした。

特に苦労したのは、面接時間の確保です。企業との日程調整は、自身の業務時間中に行う必要があり、抜け出す場所や言い訳を考えるのに苦労しました。web面接が主流になりつつありましたが、それでも自宅で静かに話せる時間を見つけるのは至難の業でした。結局、有給休暇を小分けにして取得したり、移動時間や昼休みを削ってエージェントと連絡を取ったりと、常に時間との戦いでした。十分な情報収集や対策ができないまま面接に臨み、失敗したことも何度かあります。

企業選びにおける希望条件の衝突と妥協

時間管理に加えて、企業選びでも厳しい現実に直面しました。私が重視していた「時間と場所の柔軟性」や「育児・介護への理解」は、多くの企業にとってはまだまだ例外的な条件だったのです。

求人票には「フレックスタイム制あり」「リモートワーク実績あり」と記載されていても、面接で具体的な働き方について質問すると、「基本的には出社」「あくまで例外的な運用」「チームによる」といった曖昧な回答が多く返ってきました。「育児や介護との両立は可能か」とストレートに聞くと、企業の担当者が露骨に難色を示す場面もありました。

自身のキャリアアップを考えれば、挑戦的なポジションや責任範囲の広い仕事に魅力を感じましたが、そうした企業ほど、長時間労働が前提だったり、柔軟な働き方への理解が乏しかったりする傾向がありました。逆に、働き方への理解がある企業では、業務内容が希望と異なったり、年収が下がったりすることが多かったです。

理想のキャリアと、育児・介護という現実的な制約との間で、常に板挟みでした。結局、私はいくつかの希望条件を妥協せざるを得なくなりました。特に、年収については当初の目標額を下げることになりました。「この条件でなければ、そもそも活動が進まない」という焦りもありましたし、「まずは両立可能な環境を手に入れることが最優先」と考えたからです。

選考過程でのリアルなやり取り

面接では、正直に育児や介護の状況を伝えるべきか、それとも伏せておくべきか悩みました。結果として、私は正直に伝えました。特に一次面接の後半や最終面接など、ある程度企業理解が進んだ段階で、自身の働き方に関する希望と、それが家族の状況に起因することを伝えました。

正直に伝えることのリスクも感じていましたが、「入社後にミスマッチがあっては意味がない」と考えたからです。中には理解を示し、「どうすれば両立できるか一緒に考えましょう」と言ってくれる企業もありました。一方で、「大変ですね」「それは難しいかもしれません」といった反応を示す企業もあり、企業の文化や担当者の考え方を推し量る重要な判断材料となりました。

評価された点としては、時間的な制約がある中でも成果を出すための具体的な工夫や、限られた時間での集中力、効率的なタスク管理能力などをアピールしたことです。育児や介護を通して培われた問題解決能力やマルチタスク能力も、視点を変えればビジネススキルとして評価されうることを実感しました。しかし、やはり時間的な制約があることがネックとなり、最終面接で惜しくも不採用となったケースもありました。

内定獲得、そして失敗と後悔

最終的に、私は育児・介護への理解があり、比較的柔軟な働き方が可能な企業から内定を得ることができました。年収は当初の目標には届きませんでしたが、業務内容には一定の魅力を感じていました。

しかし、入社後に後悔した点があります。それは、「企業の理解度」を言葉だけでなく、もっと深く確認しておくべきだったということです。面接では「大丈夫です」「皆さん助け合っています」といった言葉で安心しましたが、実際に入社してみると、制度はあっても利用しにくい雰囲気だったり、特定の部署でしか柔軟な働き方が浸透していなかったりと、ギャップを感じることがありました。

特に、急な育児や介護の都合で休みや遅刻・早退が必要になった際に、言葉には出さなくても同僚に申し訳なさを感じてしまったり、評価への影響を懸念したりすることがありました。これは、入社前に現職社員と話す機会をもっと設けるなどして、職場のリアルな空気感や慣習を確認しておくべきだったと強く感じた点です。

また、年収を妥協したことについても、入社後に「もう少し粘れたかもしれない」「自分の市場価値を正確に把握できていなかった」と感じる場面がありました。時間がない中で焦って判断してしまった部分があったと反省しています。

この経験から得られた学びと教訓

私の経験から、育児や介護と両立しながらの転職活動において重要だと感じた点はいくつかあります。

まず、自身の「譲れない条件」と「妥協できる条件」を活動開始前に明確に定めておくことです。そして、妥協する際は「なぜその条件を妥協するのか」を自身の中で納得しておくことが、後々の後悔を防ぐ上で重要だと感じます。

次に、企業の「育児・介護への理解」や「柔軟な働き方」に関する実態を、可能な限り深く見抜く努力をすることです。面接担当者の言葉だけでなく、社員の生の声を聞く機会(リファラル採用やOB/OG訪問など)を設けたり、口コミサイトやSNSで情報を集めたりすることが有効です。制度の有無だけでなく、それが実際に利用されているか、利用しやすい雰囲気かどうかが重要です。

そして、育児や介護をキャリアにおける「弱み」と捉えすぎないことです。限られた時間で最大の成果を出す工夫や、突発的な事態への対応力、複数のタスクを同時にこなす能力など、これらの経験を通して培われたスキルは、ビジネスにおいても必ず活かせます。自身の状況をネガティブに伝えるのではなく、それをどう強みに変えてアピールできるかを考えることが大切です。

最後に、家族との協力体制は転職活動を成功させる上で不可欠です。活動時間の確保や精神的なサポートなど、家族の理解と協力があってこそ乗り越えられる壁が多くあります。

まとめ

30代後半で育児や介護と両立しながらの転職活動は、多くの困難を伴います。時間管理、条件の妥協、企業選びでの見極めなど、様々な課題に直面するかもしれません。私の経験のように、後になって「こうしておけばよかった」と反省することもあるでしょう。

しかし、自身の状況を正直に伝え、それに理解を示してくれる企業は必ず存在します。自身のキャリアを諦める必要はありません。この経験が、同じような状況で転職を考えている方々にとって、少しでも現実的な道筋を見つけ、より良い選択をするための一助となれば幸いです。